世界の社長から

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原付にガソリンを入れに行った。

私は極度の方向音痴で、家から最も近いスタンドへ行くのにも数度道に迷いつつかれこれ一年給油している。

この度も道に迷って辿り着くと、見覚えのない公園に行き当たった。

私の住む町にはたくさんの公園があり、それぞれの公園に格と縄張りがある。最も強い公園はというと「福池」「東山」「噴水」の御三家で、この三大公園周辺ともなると、地名よりも大きなネームバリューを持つ。

 

私の家は「福池」の真正面に位置しているので、ほとんど他の公園には行くことがなかった(他の公園までも五分もかからない距離なのだけど)。

あまり「福池」以外に行くことできなかった私は「噴水」が非常に好きで、三歳の頃などは母にせがんで連れて行ってもらおうと何度も試みた。

「噴水」はその名の通り公園の中心に噴水があり、水路が引かれているというそれはそれは魅力的な公園だった。私が小学生の頃に噴水に杭が打たれ、いつからか水を噴しなくなってしまっていたのだが。

 

私が好きだった公園にもう一つ「梨子の木」という公園があった。この公園は「福池」から徒歩二分程の場所に位置していて、私が園児の頃には周囲にマンションも余り建っていなかったため、穴場感に溢れており、公園の八割がほぼ単なる山というワイルド過ぎる立地も相まって、秘密基地的な公園として密かな人気を集めていた。

 

この「梨子の木」にダイソーで買った方位磁石を持って一人で辿り着いたときには、この街を制覇した事を確信したが、年と共に街も広がって行くのだなあ、と思った。

 

今度ダイソーで方位磁石を買ってこの公園に行ってみよう。

一人で辿りつけるだろうか。

 

帰り際、「噴水」に立ち寄ってみたが、未だ水を噴する気配はなく、球体はあの頃よりずっと低く、私と同じ目線で佇んでいた。